クラシック童謡 ジャズプレイヤー
笑顔をギブアンドテイク
(
株式会社英和出版社
EIWA MOOK 65歳からの青春 生きがいと自分らしさを見つけられる本 趣味FILE 02 2014年11月1日発行掲載記事を転載)
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野放図なジャズドラマーからー転
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春川さんと音楽の出会いは長い。
大学時代には、キャバレーやダンスホールでジャズドラマーとして活動し、学費を稼いでいたという根っからのミュージシャン。
ところがバンド仲間のひよんな一言によりドラムスティックを放り投げ、音楽活動をばったりと辞めてしまう。
「仲間から『お前のような野放図は"セールスマン"なんか無理!』って言われたんですね。
その時代はまだ"セールスマン"という外来語の響きが新鮮だった時で、言われた僕も意味なんかわからない(笑)。
でも『無理だろ!』と言われたのが、どうにも悔しくて。
恐らく負けん気に火がついちゃった(笑)」
仲間たちの大方の予想を裏切り、すぐにとある外資系の光学会社にサラリーマンへと転身を遂げる。
その後、別の外資の光学会社と20年ほど世界各地を飛び回る生活を送る。
しかし、41歳の時、「お金のためのネクタイ生活はやめよう」と思い立ち、日本へ帰国。
これまで経験で培った技術をペースに「メガネ加工」の工房を浅草に構え独立し、それと同時に、音楽活動を再開する。
プロ活動と童謡ジャズの経緯
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49歳の時、浅草HUBを中心にドラマーとしてプロ活動に入っていく。
しかし、時代とともに会社の仕事は激減していった。
「『好きなことをやる!』と決めたのは自分自身。生活は確かに苦しくなったんだけど、過去は過去。私はこの頃のことを『おしんの時代』って呼んでいるんだけれど、この時代のおかげで、今の自分があると思っています」
童謡ジャズを始めたのは、浅草HUBでのバンド活動も16年目に差しかかった頃。
きっかけは、親交のある「浅草おかみさん会」の富永会長から「時代が変わり、このままだったらジャズも店も廃れてしまう。お客は何が欲しいのか?今一度、初心に帰る必要があるんじゃない?」と言われた一言だった。
「『はっ一』となりましたね。確かにこのままでは、自分たちがやっている大好きなデキシージャズの未来は明るくないなと」
それから、春川さんは「日本人の心の音楽とは一体なんなのだろうか?」を初心に帰って考え、暗中模索の中で辿り着いたのが「童謡」だった。
「さっそく「童謡を楽しむ会」と称して、数人の仲間と介護施設を巡る演奏活動を始めました。すると観客であるおじいちゃん、おばあちゃんたちの反応が全然ちがうんです。『あ、童謡は間違いなく日本人の心の音楽であるんだ』というのが確信できました」
現在、この活動は当初は予想もしなかった600回以上の公演を重ねる。
並行してデキシーの生演奏で童謡を届ける「童謡デキシーランダース」も結成、こちらも大人気となる。
やってみて分かった童謡のすばらしさ
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各地で続けている「童謡を楽しむ会」は今年で9年目に突入。
ピアノと楽曲解説の春川さんを筆頭に、女性ボーカリスト陣、バンジョー、チューバ、トランペットというメンバーは、全員ジャズ界のトッププロたち。
『もみじ』『里の秋』…おなじみの懐かしい童謡の演奏が始まると、参加者も一緒に楽しく歌う。
「皆さん帰り際に『また、楽しみにしてます!』と言って感動して帰っていってくれる。それはまさに、僕ら演奏する側にとっては物凄いパワーなんです。ギブアンドテイク。そしてこの活動を通じて『童謡』そのものの時代認識や、一つ一つの歌詞に込められたメッセージも音楽家としてたくさんのものをいただいてます」
プレイヤーは与えるだけではない、与えられる方が多い‥・・・・「童謡」を通じ、音楽の持つ楽しさ喜びを、春川さんは今、再認識しているという。
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